海外で犬に噛まれたらどうすべきかご存知だろうか?
今回は、ちょっと真面目なお話だ。
東南アジアで犬に噛まれ、その後狂犬病対策に奔走した話である。
いざという時に対応を誤らないために、恐らくレアであろう経験談を元にご紹介する。
話の概要は以下の通り。
- 犬に噛まれた状況
- 現地の医療機関を受診
- 帰国時、検疫で申し出る
- 国内で狂犬病ワクチンを追加接種
- 楽天カード付帯の海外旅行保険の落とし穴
1つでも気になる項目があれば、先をどうぞ。
はじめに
はじめに言っておくが、このブログでは疫学的な詳しい話は避ける。
専門的な話が知りたければ、外務省や厚労省へのリンクを貼っているので、そちらを見てほしい。
医療者ではないブログ主が伝えるべきは、
「イチ旅行者が実際に被害にあったらどうなるのか」という事例だ。
狂犬病とは?
狂犬病ウイルスを保有している動物に噛まれるなどして感染し、発症すれば有効な治療法がなく致死率100%という恐ろしい病気である。
日本では、犬への予防接種などにより狂犬病は撲滅されているが、そのような国は世界中でも数カ国しかない。
日本でも、海外で犬に噛まれ帰国後に発症し、亡くなった事例が僅かながらある。
犬に噛まれたブログ主が、一番伝えたいこと
一番お伝えしたいことは2つある。ここだけでも読んでくれたら幸いだ。
海外で犬に噛まれたら、すぐ受診せよ
必要以上に怯えることはないが、「軽傷だし、今すぐ受診しなくても…」と根拠のない楽観視により迅速な受診を怠ると、最悪の事態が起こる可能性が高まる。
現地の人を頼る勇気を持て
病院の場所や情報も知らない異国の地。
ましやてブログ主のように比較的軽傷、夜間、車がない、言葉に不安がある場合、1人では「すぐ受診なんてできないだろう」と対応を先送りしがちとなる。
しかし、宿のスタッフなど現地に詳しい誰かに、思い切って助けを求めることで、対応が早まり、手遅れとなる可能性を減らすことができる。
事の始まり:犬に噛まれた
2023年6月、マレーシア・ペナン島のテロック・バハン。
Tonyのゲストハウスの近くの道を、ブログ主は1人歩いていた。時刻は20時頃、すっかり周りは暗くなっている。
ブログ主は、昼間辛いことがあって大泣きし、凹んでいた。
さらに明後日が帰国日なので、この居心地のよい宿とサヨナラしなければならず、それもあってより憂鬱で気分が沈んでいた。
メンタルの落ち込みで判断力が鈍ったのであろう。
夜なのに、今まで行ったことのない人気のない道(宿のすぐ近くだった)を、散歩がてら歩いてしまった。
静かな夜が一変した。
道の一番奥は行き止まりだったが、道沿いの家から2頭の犬が吠えながら追いかけてきたのだ。
「道を歩いているだけなのに面倒くさい犬だな…」
犬達は単に吠えて追い払おうとしているだけだと思っているブログ主は、彼等に背を向けて遠ざかろうとした。
「痛い!!!」
その瞬間、犬がブログ主のもも裏を噛んだのだ。
まさか攻撃されるとは、微塵も考えなかった。
少なくとも日本ではそうだったからだ。
犬達は噛んだ後も至近距離で吠え立て続け、ブログ主は逃げ場がなく、恐怖とショックで一歩も動けなかった。
「Stop!!」と手をかざしてみるが、勿論効果はなく、いつまた噛まれてもおかしくない状況。
制御できない動物への本能的な恐怖。
もう、ダメかもと思った。
その時、
犬が吠え続けているからか、家の玄関に明かりが灯ったので「Help‼」と叫んだ。
飼い主が様子を見に来て、やっと犬達は引き下がった。た、助かった…
「噛まれた」と言ったが、彼には英語が通じなかった。身振り手ぶりで必死に説明するも、首を傾げ微妙な反応。もう話しても仕方がない…
警察とか、そんなことはその場では一切考えられず。
恐怖から解放されたものの、痛みとショックで精神的な余裕など欠片もなかったのだ。
足は痛むが、幸い歩けたので自力でゲストハウスに帰ってきた。
ちなみにブログ主は、狂犬病を含む海外渡航用の予防接種は何もしていなかった。
宿にて:助けてくれた人達の話
宿に帰り着くと、ありがたいことに丁度オーナーTonyがいたので、すぐさま事情を説明した。
奇遇なことに、宿泊者の中華系母子の子供が転んで膝を擦りむいたらしく、丁度消毒液を使って手当していた所だったようだ。
ブログ主は短パンに履き替え、まず外務省のHPに記載のとおり、シャワーで傷口を洗った。
傷口は小さく、出血も少なかったので少しホッとした。しかし、なぜか履いていたズボンには穴がなく…何で??
その後、先程の親子の母親が消毒を手伝ってくれた。
さらに、何と彼女は「一緒に病院へ行くわ」とブログ主に言ってくれたのだ。
1人異国の地で怪我をしたブログ主にとって、この言葉がどれほどありがたく、心強かったことか。
勿論、彼女の子供が怪我したという理由が一番だろうけど、そんなことは関係なかった。
病院へ連れて行ってもらう
Tonyが車を出してくれ、母子と一緒に乗り込む。
申し訳なさと、傷と受診費用への不安が山のように襲いかかってくるので、ずっとスマホで保険手続きを調べていた。
隣町バトゥ・フェリンギの病院は開いておらず、Tonyはさらに遠い町タンジュン・ブンガまで車を走らせてくれた。
時刻は21頃だったが、そこの病院は…よかった、まだ開いていた!
個人クリニックという規模感だったが、日本と同レベルのキレイな病院で安心した。
受付でパスポートを見せ、犬に噛まれたと何とか説明する。
待ちもなく、すぐ診察室に呼ばれた。
医者にも説明するが、英語で説明が上手くできず。結局、Tonyにも入ってきてもらって助けてもらった。迷惑かけっぱなしだ…。
そしてワクチンを打つことになり、隣の処置室へ移動。
傷口の消毒と、ワクチン接種が行われ、抗生物質と炎症を抑える飲み薬が処方された。
特に、後日受診の指示などはなく終了。
「保険のために診断書が欲しい」と言ったが、「医者の指示で仕事を休ませるための書類だから、出せない」と言われてしまった。
処置内容と料金を記載したレシートはもらえるので、それで何とか手続きが通ることを願うしかない…
ドキドキの精算。
何せ、海外で受診するなんて初めてだ。物価の安いマレーシアだから、とんでもない高額にはならないことを祈りながら…
料金は、195RM(5,850円ほど)。
よかった…全然安くてホッとした。クレカ払いもOKなので超助かる。
とりあえず一安心だ。
同行してくれた母子の診察も無事終わり、宿へ。
正直、自分1人だったら「すぐ受診する」という判断は絶対できなかった。夜だし車もないし、病院の情報も知らない、おまけに英語も下手だし。
Tonyと、あの母子のおかげである。
彼等は私の命の恩人だ…助けてくれて本当にありがとう。
多分しつこいくらい、お礼と謝罪の言葉を言っていたと思う。
ちなみに傷口は、翌日以降から内出血が酷くなり傷んだ。
楽天カード付帯保険の落とし穴
宿に帰ってすぐ、楽天カードの海外旅行保険の24時間デスクへ電話したのだが…
何とブログ主は保険適用条件を満たしていなかった!!
終わった…。
一応言っておくと、日本出国前に条件は勿論確認したのだ。
保険が有効となるには、日本を出国する以前に 『募集型企画旅行の料金』 に該当する代金を 利用条件のある楽天カード で支払っていることが条件になります。(中略)
募集型企画旅行に該当するもの
クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険 https://www.rakuten-card.co.jp/overseas/insurance/
・旅行代理店で予約した海外パックツアー料金
↑2024年2月15日現在の表記。
今は分かりやすいが、ブログ主が見た時はもう少し違う表現で分かりにくかったのだ。(言い訳モード)
ブログ主は旅行会社等は使わず、航空券も宿も自力で手配していた。
薄っすら対象外だろうなと思いながらも、期待して別のページを見たのだが…
そこに「航空券の支払いに、カード利用していればOK」と書いてあったのだ。最早どのページかは分からないが、あの表現はアウトだろう、勘違いしちゃうよ。
そしてブログ主は、保険への出費を渋り、自分に都合の良い情報を信じるという愚かな判断をしてしまった。
今にして思えば、直接航空会社のサイトで購入したものは該当しないだろうと分かるが…
しかし、これはブログ主だけではなかった。
数カ月後、一緒に海外旅行した知人も、全く同じ誤解をしていたのだ。
もしかしたら、他にも同じ勘違いをしている人もいるかもしれない。
ブログ主のように、悲惨な事態になる前に警鐘を鳴らしておかねば…!
というわけで、
「そんなこと見たら分かるじゃん…低レベルな話!」という人以外は、今一度ご自身の旅行がクレカ付帯保険の適用条件を満たしているかの確認をオススメする。
ブログ主の場合、総額で数万程度という比較的少ない医療費で済んだのは、せめてもの救いである。
ケチな性分だが、これ以降は懲りて海外旅行の際は保険に加入するようになった。
皆さんも気をつけてね。
帰国時、検疫にて
噛まれた2日後、予定通り帰国。
外務省のHPに「犬に噛まれたら検疫所に申し出てください」とあったので、係員に声をかけた。
別室に案内され、そこで詳しく説明。
現地の病院のレシートを見せたのだが、よく見たら何のワクチンか記載がないことに気がついた。当たり前のように狂犬病ワクチンだと思っていたので、確認しなかったのだが…これは落ち度だった。
検疫官も「分からないけど、状況的に狂犬病なんでしょうね…」と困り顔。
続いて、受傷部分を見せることになった。
しかし、太ももの裏というズボンを脱がないと見せられない場所である。ブログ主は女なので、女性の検疫官がその場に呼ばれることとなった。
てっきり女性だけに見せるのかと思ったが、何と2人共にパンツ姿を晒す羽目に。
さすがに…多少の恥ずかしさは感じた。
その後、検疫官から狂犬病ワクチン取り扱いのある病院リストと紹介状をもらった。
海外渡航前の予防接種は何も受けていなかったので「破傷風も接種したほうがいいでしょう。」と言われ、さらにすぐにでも受診するよう念を押された。
ちなみに、事前に狂犬病予防接種している場合でも、噛まれた後は追加のワクチン接種が必要なので必ず受診を。
国内の病院で追加ワクチン接種
傷の様子を見たい方は、クリックどうぞ。
・受傷翌日:牙の刺さった跡が見えるくらい。
・受傷3日後:周囲に内出血が見られる。
見た目は大した事なさそうだが、結構痛む。
医師曰く、動物の牙は表面がギザギザしているので、傷口が治りにくいらしい。痛みは約一ヶ月ほど続いた。
そして、国内の医療機関を受診。
「現地の医療機関で何を打ったのかは確かめられないけど、狂犬病ワクチンを打ったと仮定して、今後の追加接種を行っていきましょう。」ということで方針が決まった。
先生は、狂犬病や破傷風に関する資料をコピーしてくれ、それらを見ながら説明してくれた。親切でいい先生だった。
噛んだ犬が狂犬病だったかどうか
噛んだ犬がウイルスに感染していたかは、2週間以上経ってもその犬が生存しているかどうかで判断するらしいが、確かめようがない。
思い返しても、ただ侵入者を排除しようとした正常そうな犬に見えたが、もし…と考えると恐ろしい。何せ、発症すればthe ENDなのだから。
もし発症したら?聞いてみた
一応先生に「万が一、狂犬病らしき症状が出たら、もう何もせずただ死を待つことになるんでしょうか?」と聞いてみた。
「んん~…本当に狂犬病なのかまずは確認しないといけないから、受診はしてくださいね」という回答だった。…そうならないことを祈ろう。
追加ワクチン接種の回数と費用
その後、規定の期間を空けて複数回の追加接種を行った。
その回数については、国内標準と世界標準でいくつか異なった接種の方法があるようだ。
ブログ主の場合は、先生と相談し4回接種し終了とした。
犬に噛まれてから0日、3日、7日、14日、28日目に接種するという方法だ。
この日数間隔は絶対ではなく、多少ズレても対応してもらえた。
これらの費用については、ブログ主の場合受傷しているので健康保険が適用された。
いや、本当助かった。
何せ、使えると思っていた海外旅行保険が使えなかったので…
ただ3割負担といえど、接種一回4,000円ほどかかったので、結構手痛い出費である。トホホ。
だが、ブログ主は今も発症することなく生存できている。本当にありがたいことだ。
今こうしてこの経験をブログに書いたり、次の旅の計画を練ったり、「当たり前」とされる暮らしを続けられているのは、この一連の出来事に関する沢山の人達の協力おかげである。
最後に
日本では考えられないようなことが、海外では当たり前に起こることがある。
マレーシアのペナン島の場合、Tony曰く犬に噛まれるのは珍しいことではないらしい。
そのせいか彼は当初、すぐ受診が必要だと焦った風でもなかった。宿泊者の親子様々である。
もし、ブログ主のように海外で犬を含む動物に噛まれてしまったら。
仮に狂犬病の可能性がほぼないにしても、何らかの感染を引き起こす可能性は十分にあるので、必ず迅速な受診を。そのために、現地の人の助けを借りる勇気を!
こんな事態にならないことが一番だが、人生では何が起こるか分からない。
ブログ主のこの経験が、誰かの危機に役に立つことを祈る。
ではでは、最後まで読んでくれてありがとう!
また次回!
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